日本初の「ヴィンテージ・タワマン」で想定外の内紛…管理組合で勃発した「理事長降ろし」の舞台ウラ!?

クーデター派は自らの理事会で新会長を選出した後、タワーマンションの掲示板で新会長を発表した……。
住民たちは騒然
突然の理事長「解任」を知った野上に対し、タワーマンションの住民からは驚きと疑問の声が相次いだ。中には、法的手続きを検討するので、弁護士を紹介してほしいという申し出もあった。
しかし、野上はそのようなアプローチを取ろうとはしなかった。
一方、クーデター派は、野上氏の不正経理を明らかにするため、外部の税理士事務所に調査を依頼した。多額の費用をかけ、防災センターにある管理組合の金庫を無理やり開けさせた。野上氏は「このことを教えてくれれば鍵を渡していたのに」と悔やむ。
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当然、不正の証拠は見つからず、少なくない報酬で調査を依頼された税理士事務所も困惑気味に報告した。
この異常事態に危機感を抱いた人は少なくない。その一人が、社外監査役の香取氏である。彼は、クーデター派の人間ではなかった。
そもそも、野上氏を会長から「解任」した彼らの「取締役会」決議は有効だったのだろうか。
この「解任」を知った一部のマンション所有者が、自らの顧問弁護士に尋ねたところ、いずれも「決議の有効性には大いに疑問がある」と回答した。
香取さんは、管理組合の顧問弁護士にも相談した。その結果、管理規約に基づいて臨時総会を招集することになった。これが、逆転の発想の始まりだった。
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クーデター派の動機
管理規約とは、各マンションの管理組合が定める、マンション運営のための「憲法」のようなものである。
野上のマンション管理組合の規約には、「監事が必要と認めたときは、臨時総会を招集することができる」という条項があった。この条項は、野上さんの発案で盛り込まれたものだろう。
この条項に従って開かれた臨時総会で、野上氏の「解任」を決定した決議の無効が確認された。さらに、クーデターが発生した取締役と監査役は全員解任された。野上氏は会長に復帰した。
もちろん、その総会で「多数決」による決議がなされた後である。この10年間の野上氏の実績が、マンション所有者の正当な支持を得たのだろう。
クーデターの経過を知った時、私は重大な疑問を抱いた。
クーデター犯の動機は何なのか。前回の記事で指摘した。
前回指摘したように、野上氏は、このタワーマンションを日本初とも言える「経営的にはヴィンテージマンション」に育て上げるなど、卓越した手腕を発揮していた。クーデター派は、自分たちの所有するマンションの資産価値が上がっても文句はないはずである。
それにしても、ほとんど違法とも言える手段を使ってまで、野上氏を「排除」した動機は何だったのだろうか。野上氏に尋ねると、一言で「大規模修繕の件でしょう」と答えた。
大規模修繕のせいでしょう。
クーデター派が野上氏を解任した理由の1つに、管理組合の30億円を超える豊富な資産を有効に活用できていない、その一部(約8億円)を「大規模修繕に使うべき」としたことがある。
クーデター派は、財政的に豊かな管理組合に大規模修繕を実施させることで、あたかも「何らかの利益」を得ようとしたのだろうか。……
野上さんは、「大規模修繕は不要」という意見だ。私もそう思う。
そもそも、大規模修繕工事は10年に1回程度行わなければならないという法的な決まりはない。それは国土交通省やマンション管理業界が勝手に決めたガイドラインに過ぎない。たとえ30億円以上かかっても、マンションは随時修繕すべきものだという合理的な考えが、クーデター派には理解できなかったのだ…。